軍師とは 戦国時代の軍師をダイジェストで解説

軍師

戦国時代の軍師と言われてまず思い浮かぶのは、武田信玄に仕えて川中島合戦で活躍した山本勘助甲陽軍鑑)、羽柴秀吉を助けて美濃攻略戦で活躍した竹中半兵衛(武功夜話)などではないでしょうか。
しかしこれらの軍師像は、江戸時代に描かれた軍記物語などでエンターテイメントとして語られるもの。
実際には「軍師」という役職は、戦国時代に存在しなっかたと言われています。
では実際の戦国軍師とはなんだったのでしょうか?
3つのポイントに絞ってご紹介いたします。

軍師はそもそも陰陽師的な存在

(~戦国時代前期)

<軍師の萌芽>

古代から中世にかけ、人々は迷信深く吉凶を大切にし加持祈祷が科学とされていました。
平安時代の末~鎌倉幕府成立の前後より武士同士の武力衝突が頻発します。
軍の主人は、戦に勝つため陰陽師に戦勝祈願をさせたり出陣の吉日を占わせるようになります。
源義家に兵法を伝授したと言われる大江匡房の本来の職業は陰陽師でした。
また、源頼朝が伊豆で挙兵する際に陰陽師に戦勝祈願をさせた記録も残っています『吾妻鏡』)。

<戦国時代前期の陰陽師的軍師>

この流れは南北朝、室町時代に入って加速していき、戦国時代(前期)にも吉凶を占う軍師は活躍しています。彼らは、
・出陣の吉凶
・攻め込む方角や日時の吉凶
・不吉とされることがあった場合の祈祷
・戦勝祈願
等を大名の側で出陣前や戦の陣中で行っていました。
そもそも呪術が科学に近い感覚なので勝つためには重要視されており、また、諸項目が「吉」とされる場合は、将兵の士気を高める役割も担いました。
この陰陽師的軍師は、吉凶を占う際に「軍配」を用いたので、「軍配者(ぐんばいしゃ)」と言われたりもします。
仕事柄、僧侶の出身者などが多い傾向にあります。

<陰陽師的軍師>

角隈石宗(主:大伴宗麟
伊束法師(主:織田信長
川田義朗(主:島津義久
小笠原源与斎(主:武田信玄

合理的な戦略戦術の立案をする軍師へ

(戦国時代中期)

<現在、一般的に認知されている作戦を立案する軍師>

戦国時代も時が進むと、合戦の規模が大きくなってきます。
「吉凶を占い、軍の士気を高めることは大切。
しかしそれだけでは戦に勝てない」というように、武士の考え方の合理化が進みます。

そこで「どのようにすれば戦に勝てるのか?」を現実的に考え戦略戦術の提言を大名の側で行う人がでてきます。
このような人たちが、現在「軍師」として認識されている人物の典型です。

彼らは、
・兵力差をどのように埋めるか
・陣形(軍勢の配置や編成)をどうするか
・地形はどうか
・どの武将を配置するか
・どの部隊から動かすか
などを合理的に考え、勝利へ限りなく近づくことを目指しました。

このようにして、陰陽師的な軍師から参謀的軍師へ主流が移っていくことになります。
しかし、陰陽師的な軍師が完全に廃れてしまい「あれは迷信だからもう必要ない」となったわけではありません。合理的な作戦も必要ですが、ことの吉凶は依然として重要視されており、両者が共存していたようです。戦国時代の終盤の人物、豊臣秀頼に白井龍伯という陰陽師的軍師が側に仕えていたという記録も残っています。

<参謀的軍師>

山本勘助(主:武田信玄)*兼務型
竹中半兵衛黒田官兵衛(主:羽柴秀吉)
真田幸隆真田昌幸(主:武田信玄)
真田幸村(主:豊臣秀頼)
島左近勝猛(主:石田三成

内政にも関わり主君を支える存在に

(戦国時代中期~後期)

戦後時代も中期~後期になるにかけて、小さな大名家は滅ぼされたり統合されていき、生き残った大名家の版図は拡大されます。領国が大きくなるにつれて課題になるのは、統治。
外側の敵をどうするか、を考えるのは需要であることに変わりはないのですが、「内側をどのように支配」を構築しないと、内部から崩壊していく恐れがあります。

このような流れの中で、意思決定者である大名は、統治・内政に関しても助言をもらえる人物を側に置いていくことになります。軍師の役割は戦に勝つこと以外にも、領国統治の分野へも広がっていきます。

<戦政両面から大名を支える軍師>

豊臣秀長(主:豊臣秀吉
小早川隆景(主:毛利輝元
鍋島直茂(主:龍造寺隆信
直江兼続(主:上杉景勝
片倉小十郎景綱(主:伊達政宗
島津義弘(主:島津義久

■まとめ

戦国時代は100年にも満たない短い期間ですが、その間の大名を取り巻く環境の変化により軍師の役割が大きく変化。戦国時代の軍師は以下のように考えられるのではないでしょうか。

<~戦国前期>
戦争:小規模
社会:迷信深い
軍師:呪術的
特徴:陰陽師、僧侶など

<~戦国前期>
戦争:中規模
社会:迷信深い/合理化が進む
軍師:呪術的/参謀的要素
特徴:軍記物で活躍する人物

<~戦国後期>
戦争:大規模(→統治の重要性が増す)
社会:迷信深い/合理化が進む
軍師:呪術的/参謀的要素/統治の支援
特徴:大名の一族、重臣、のちに大名となる(いわゆる組織のN,O2の人物)

(寄稿)渡辺綱

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