後醍醐天皇 目指した理想 延喜・天暦の治とは?

後醍醐天皇

平安京から離れたそれぞれの地で、武士が税を集めて政治行政を行っていた1300年代にあって、平安京の天皇自ら主導する政治体制を構築しようとした後醍醐天皇(ごだいご-てんのう)は野心的な天皇として有名です。
その後醍醐天皇が、目指すべき政治の理想形としたのが、800年代末から900年代半ばの醍醐天皇とその第十四皇子村上天皇による延喜・天暦の治です。
また、延喜・天暦の治は1000年代の多くの貴族からも理想的な政治体制であると言われていました。
果たして、称賛される延喜・天暦の治とは、どれほど素晴らしいものなのか。


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本記事で探っていきます。

延喜・天暦の治を政治の理想とする理由

醍醐天皇と村上天皇の延喜・天暦の治、800年代末から900年代半ばと言えば、藤原道長を筆頭に藤原氏の独裁政治が行われる1000年代の少し前のことです。
醍醐天皇の在位中には藤原氏の摂政関白はおらず、村上天皇の時代もはじめの数年間だけ藤原氏の関白がいましたが在位期間のほとんどに摂政や関白はいませんでした。
また、醍醐天皇の時代、父宇多天皇が登用した学者菅原道真を大臣という要職に就ける等、藤原氏ばかりが要職に就く時代でなく、天皇の裁量で役人を登用できる時代のように見えます。
こうして、延喜・天暦の治は、藤原氏独裁政治でなく天皇が主導で政治を行っていたようにも見えるわけです。
さらに、醍醐天皇が紀貫之に編纂を命じた古今和歌集や村上天皇が編纂を命じた後撰和歌集等々、ビッグな文化活動も両天皇の功績として後世に残っています。
また、延喜・天暦の治の少し前、800年代には、朝廷の内部で大事件が立て続けに起こっています。


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延喜・天暦の治は、そうした大きな争い事もなく比較的平穏な時代であったことも、称賛にもつながっているのでしょう。

延喜・天暦の治の実態

藤原氏が摂関の要職に就いて政治を独占していないことを延喜・天暦の治が天皇主導政治の時代であったと見える一方、藤原氏の強大権力を摂政や関白に就任するという形で表すようになったのは1000年代あたりから本格化したことで、延喜・天暦の治の時代も、摂政や関白に就任していないものの藤原氏は強かったと思われます。
実際、醍醐天皇の時代には藤原時平が左大臣、村上天皇の時代は藤原実頼が左大臣として政治を主導しています。
また、醍醐天皇は奈良時代に作られた政治体制である、天皇をトップに朝廷が日本列島の全地域全人民を統治する本来の朝廷政治の姿、律令体制に戻すことを試みたとされます。
これにより、地方の土地や人民を私有化していた有力貴族や寺社に一定の権力を振るえたものの、日本列島の全人民を平安京の朝廷が統治することはもはや不可能であり、成功したとはいえません。逆に、律令政治が不可能であることを証明し、地方の役人や有力者が現地支配する新たな体制を明確にするきっかけになっています。

延喜・天暦の治は誰に取っての理想?

以上見てきたように延喜・天暦の治は、歴史上特筆すべき良い政治が行われていた時代と言うわけでもないようです。
では、延喜・天暦の治を良い政治が行われていた時代だと言ったのは誰か?基本的には、1000年代の下級から中級の貴族たちです。
藤原氏は、延喜・天暦の治の少し前から朝廷内部で事件を起こしつつ藤原氏以外の貴族を排除して、延喜・天暦の治辺りですでに強い権力を持っていましたが、延喜・天暦の治の時代に朝廷の新ルールを作ったり、天皇との距離を外戚として近くする体制を築いていき、1000年代に権力を盤石なものにします。
そうなると、1000年代の貴族は藤原氏に近くないと出世できなくなり、家柄によって出世できるかどうか決まり、身分は固定されていきます。
つまり、菅原道真等のように、才能で出世することができなくなります。


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それで、朝廷で出世をできない下級から中級の貴族たちは、まだ身分の固定まではなされていなかった延喜・天暦の治の時代を美化すると同時に、その時代に摂政関白を置かなかった醍醐天皇や村上天皇主導の時代であったとしたのでしょう。
また、後醍醐天皇のように天皇主導の政治を目指す人にとって「天皇が主導の時代はよかった」という思いは支持者を増やすのには打ってつけです。
また、後醍醐天皇の後、江戸幕府討幕や明治政府の皇国史観にも、延喜・天暦の治を理想とする思想はつながっていきます。

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